書評「マンションの選び方」

今日は、当研究所の久保マンション管理士の御尊父、

久保峰雄氏のマンション管理関連書籍コレクションから一冊ご紹介いたします。

 

中村幸安著「マンションの選び方」広済堂出版、昭和52年(1977年)刊

 

この本が書かれたのは、いわゆる第3次、第4次マンションブームのころですが、

その直前のオイルショック時の資金不足、資材不足がたたって、

手抜き工事、欠陥マンションが社会問題になった時期でもありました。

 

この本では、欠陥マンションの驚くべき実例や、

実際に寄せられた住民からの苦情などをもとに、

当時のマンション業界の構造的欠陥が鋭く追及され、

インチキマンションを買ってしまった人には、瑕疵保証追求の方法を、

またこれからマンションを買おうという人には、

欠陥マンションを見抜く知恵を、

わかりやすく、具体的に説き明かしています。……

 

この本が書かれて40年近くがたちます。

その間に、姉歯事件をはじめとするマンション問題が噴出し、

それに対する法的規制や行政指導など、さまざまな対策が講じられてきましたが、

果たして、マンションを取り巻く環境は本当に改善されているのでしょうか?

 

「高温、多湿、他積雪のわが国で、陸屋根(平らな屋根)の建物を設計した最初の人は無知か狂気のいずれかであったでしょう。以来、私たちは屋根からの雨漏りに悩むようになったといっても過言ではないでしょう」

 

「討議の過程では民主主義を標榜しながらも、多数決で押しまくる政党政治のようなことはやらないで、とにかく最高の目的に向けて轡を並べることに長時間をかけることが『団結』の意味なのです。ひとたびこの『団結』ができると、ずっと住みよいマンションになるはずです」

 

「弁護士だけでなく、判事や検事も、建築のこと、とりわけ集合住宅のことについては知識が乏しいのです。……悩めるものを前において、わからない検事とわからない弁護士が論陣を張り、わからない裁判長が判決を下すということになりかねないのです」

 

このような、今でも通じるような示唆に富んだ文章を読んでいると、

著者の洞察力、先見の明に驚かされると同時に、

マンションを取り巻く状況は、今も全く変わっていないのではないか、

そんな暗澹たる思いにもさせられます。

 

そういえばこの本では、当時、欠陥マンションが多数生まれた原因の一つに、

東京オリンピックや大阪万博といったビッグプロジェクトに多くの職人が動員され、

マンションの建築現場に、腕のある技術者がいなくなったことが指摘されていました。

 

いますでに、新たな東京オリンピックに向けて国を挙げたプロジェクトが始動していますが、

果たして大丈夫なんでしょうか、日本のマンション……

 

コメントをお書きください

コメント: 1

ブログ カテゴリー

新着ブログ